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【ミニマルな僕らはループペダルを使おうぜ】第1回 Ed Sheeran(エド・シーラン)


バンド組めてますか?

軽音楽部に入った部員の皆さんこんにちは。バンド組めてますか?
今この記事を読んでる人の中でも、初心者でギターを始めたばかり。そんな貴方には早急にドラムかキーボードへの転職の道をオススメします。

Fコードが握れないまま持っているプレイテックのギターなんぞとっととメルカリにぶん投げて他の機材を買いに行ってください。お母さんより



夢と希望を抱えて憧れの軽音楽部に入った子達はぶっちゃけかなり多いと思う。

君も初心者だけど入部したらすぐに上達して、部内でも有数のモテモテギタリストになっちゃった挙句、かわいいゆるふわ後輩女子からの告白もされてあっという間にスクールカースト上位になる未来とか胸に秘めてたんでしょ?








それ幻覚です。




ここまで読んで鬼の形相でイザナギを使おうとした君、ちょっと待ちなさい。
何もバンドを組むのが不可能とかそういう事を言いたいわけじゃない。

筆者も学生時代に軽音楽部に初心者ギタリストとして入部しそれなりに部活動に勤しんだ経験があるが、実際問題、楽器初心者が早急にバンドを組むというのは存外に難しかったりするのだ。

特に部員数が多かったり楽器経験者ばっかりの学校というのは、演奏クオリティが重視されている側面もあって初心者は経験者と比べてもバンドを組む敷居が高い場合がほとんどである。

楽器経験者は同じく楽器経験のある者としか組みたがらないし、同じパートの人数が多ければ多いほどテクニックのある人から引っ張りだこになるのは世の理なのだ。特にギタリストという市場は九割くらいの確率で飽和している。そりゃそうだ。1万5千円出せば初心者セットが買えちゃうからね。


唯一初心者が生き残る条件として、美男美女で親しみやすく音楽全般に詳しいという内面(あと眩しい笑顔)を持っていれば、経験者からの手取り足取りレクチャーという裏ルートから楽器経験値を稼ぐことができるのだが、この記事を読んでいる人の大半はボソボソ声で無愛想で何故かメジャーの音楽を毛嫌いする人格破綻者の方ばかりだと思うので今回は別ルートを模索しようという話である。
イザナギはやめて。

バンドが組めないからと嘆く必要はない


軽音楽部に入って一番陥りやすい問題とは何か。
それはメンバーが足りなくてバンドが組めないという事である。
初心者が初心者同士で組むこと自体は、和気藹々とした空間でお互い着実に楽器経験を積むことができるので全く問題ないのだが、それすら叶わない場合は話が別だ。

軽音楽部に入れば色んな人とバンドが組めると思って入部したにも関わらず、バンドも組めず部室への足どりも段々重くなっていく日々。
KANA-BOONとか[Alexandros]とかの憧れのバンドのコピバンを組もうと孤軍奮闘している中、気づけば同じ年度に入部した初心者の女子が経験豊富な先輩に調教されて「Death Cab For Cutie…」とかよくわかんないこと口走ってたりしてませんか?それNTRですからね?訴えたら勝てますよ。

不安な僕らは旅に出るなど現実逃避なんてしている場合じゃない。

そもそも今はコロナで不要不急の外出は控えなくてはならない。
早急にこの部内で埋もれている状況を自分の力で打開するべきなのだ。



「でもバンドを組むメンバーなんていないし…」


安心して欲しい。そんな貴方に今日はこちらの商品をご紹介しよう。







デデドン!!【重低音強化】










ループペダル〜〜〜!






上の画像にあるオタクくんの好きそうな機械を使いこなせば、部内で友達が少なくバンドも組めない僕らでもあっという間にバンドを組んでるかの様に多種多様な音を鳴らすことが出来る。
孤独感は特に変わらない。

本連載記事【ミニマルな僕らはループペダルを使おうぜ】は、ループ・サンプリングペダルを使用している様々なアーティストのライブパフォーマンスに焦点を当てながら解説し、初心者ギタリストを筆頭としたバンドを組めずにいる僕らが、組めないまま部内で無双するための指南書である。
これも無理なら<友達の作り方 大学生>とかでググってください。

ループペダルってなんすか

そもそもループペダルというものを諸君はご存知だろうか。
簡潔に言えば、自分の録音した音を繰り返し再生する機械なのだが、まずは第1回目のテーマとなるイギリスの超有名SSW、エド・シーランの演奏を見てみよう。

上記の動画は、彼の代表曲”Shape Of You”のライブパフォーマンスだ。美女がやたら多いな。

演奏解説の前にエドが使っている機材について解説しておこう。
まずは彼の足元にある機材。これが前述のルーパーと呼ばれるものだ。

基本的には足元に搭載されているペダル部分を踏むことで録音と再生を繰り返しいくつものトラックに音を重ねていく仕組みとなっている。

ちなみにこちらの”CHEWIE Ⅱ”というループペダル、調べたらなんとエドの友人によるカスタム機材らしく、4トラックを独立で扱える様にBOSSのRC-20XLを魔改造してPCのループソフトMobius2と連動する様に作ったものらしい。1回目から取り上げるアーティスト間違えたわ。

彼のオリジナル機材という点は置いておき、基本的には市販のループペダルとそう大きな差はない。
もしもこの記事を読んでいる読者が彼と同じ様な機材が欲しければBOSSのRC-300などが、3トラック独立での操作が可能なので適していると思う。

Shape Of You”のループ解説

それでは彼のライブパフォーマンスを見ながら楽曲の組み立て方を見ていこう。
まずは足元にあるループペダルの左端に位置している〈REC/PLAY〉と記載のあるフットスイッチを押すと、その上にあるライトが緑色から赤色に点灯し、回転する様子が見える。

これは待機状態から録音状態に移行した事を示しており、色が切り替わった瞬間からエドがブラッシングによるフレーズを録音しているのがわかる。この時の1回目のフレーズというのは、実はループペダルでの演奏においては最もミスをしてはならない箇所であり、彼の非常にタイトなブラッシングも出来る限りその後の録音時にも指標となるようにはっきりとしたリズムになっているのがわかる。

ワンフレーズ録音した後には再度同じスイッチを踏むと黄色に点灯し、先ほど録音したばかりのブラッシングが流れているところを見ると、これはオーバーダブ状態になっていると考えるべきだろう。
※オーバーダブ状態:再生している間も、更に音を重ねることが出来る状態

そのままアコギの胴を手で叩いたパーカッションが即座にトラックに録音されており、こちらも2小節で再び再生されている。

基本的なビートを録音したら、次は”Shape Of Youといえば”の木琴リフを録音する。
ライブ映像を見ながら筆者は驚愕したのだが、ここの木琴リフ、同じ音階の音がフレーズ内にいくつも入っているにも関わらず、エドがキーボードで鳴らす際には黒いテープを貼っているところから1音1音同じ音階でも別々の白鍵に割り当ててある。

つまり脳死で左から右へ順番に白鍵を押すだけであのメインリフが鳴るようになっているのだ。
どんだけミスしたくないねん。


イントロに入るまでに上記のフレーズを録音し、最後に3声のコーラスパートとバッキングを録ったら準備完了だ。

ここまでにエドが作ったトラックは

トラックA:木琴リフとパーカッション
トラックB:ギターのバッキング
トラックC:コーラスパート

の3つのトラックに分類することが出来る。
これらを基軸としてShape Of You”の演奏を行うのである。

ループペダルのコツ

Aメロが始まってから、基本的にはエドは歌うのみで後ろではトラックAのリフとパーカッションだけ鳴っている。
しかし安易に垂れ流すのではなく、サビ前ではそのトラックAも止めて無音の瞬間を作ることで最小単位でもメリハリがつくような形を取っている。

これはルーパーを使う時のコツでもあるのだが、録音したトラックを安易に全て流すような安い真似は極力抑えた方がいい。当たり前ではあるのだが、同じフレーズがひたすらに繰り返されるミニマルミュージックでは
観客が飽きを感じやすい為、展開の妙というのが非常に重要となる。

例えば今回取り上げたShape Of You”に関しても、基本的な曲構成は

イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏

という形になっており、特筆して複雑な曲構成にもなってはいない。
(洋楽にサビとかそういう日本人的マインドを持ち込むのがヤボなのは百も承知だ)

しかしその中でも全編を通して盛り上がりの強弱というのはエドも非常に意識している部分なのだろう。
最初のサビに行くまではトラックAのみしか使用していないが、1サビ以降では適宜トラックBのバッキングを再生し、リアルタイムで弾くバッキングと足したり引いたりを組み合わせることによって違和感なく徐々に盛り上がるように組まれている。

シンプルだが無駄のないお手本のようなループペダルのプレイだ。

終盤には全てのトラックを鳴らしながら、自分自身もギターを掻き鳴らすことで最後の盛り上がりを演出している。

あとがき

いかがだっただろうか。今回はループペダルと、その模範的なプレイからエド・シーランのShape Of You”を取り上げたが、ループペダルの魅力はまだまだ語り尽くせない。

一人の時でももちろん優秀な機材ではあるのだが、バンドサウンドにおいても非常に真価を発揮するのがループペダルの魅力なのだ。

おうち時間が増えた今、みんなもループペダルをサウンドハウスで買って引きこもりライフに狂気の種を蒔き始めてはいかがだろうか。

それでは第2回:名機DL4を用いたMinus The Bear編でお会いしましょう。