YouTubeレビュー

ギターの試奏に悩める方へ~“Norman’s Rare Guitars”の演奏動画を参考にせよ~


試奏とかいう恐怖の2文字

「試奏」

この2文字で震えあがる駆け出し~中級者ギタリストは少なくないだろう。そろそろ新しいギターを弾いてみたい、手に入れたいと思いつつも楽器屋に行くのが少し億劫な理由ランキング堂々の第1位、それが「試奏」だ。

では、なぜ試奏が怖いのか。

いくつか要因はあるが、大体は「何を弾けばいいかわからない」ということである。

もちろんメンタル的な側面もあるだろう。「下手に見られたくない」とか「周りの目が気になって恥ずかしい」とか色々あると思う。ただ、これらはマインドセットで改善できる側面だ。「何を弾けばいいかわからない」については技術的な側面の方が大きいだろう。

これに囲まれていつも通り演奏できる駆け出しギタリストいる?


以前は“これは楽器屋で弾かない方が良いよ”というマイナスを避けるための記事や動画が多かった印象がある。ただ、これだと「何を弾けばいいかわからない」という問いに対しての回答になっていない。

筆者もギターを始めたころは同じ悩みを持っていたが、調べてもあまり参考になるものがなかったために、楽器屋に行くと店員さんに弾いてもらっていた時期があった(これも立派なギターの選定方法だが)。

しかし、最近はYoutubeの成長が著しい。「試奏はこれを弾いておけば間違いなし!」と試奏時の指南動画がYoutubeに沢山投稿されている。現代がいかに恵まれているかを実感する瞬間だ。

これは界隈で有名なYoutubeチャンネル“ギター博士”の動画の1つで、ギター選定及び試奏時のポイントをまとめている。この動画は解説が非常にわかりやすく、参考になるものであることは間違いない。正直これをコピーすれば試奏で困ることはないだろう。

ただ、それだと話が終わってしまう。今回私はこの動画よりもギタリストの為になるのではないかと、あるYoutubeチャンネルを引っ提げてきた。

それが“Norman’s Rare Guitars”だ。

Norman’s Rare Guitarsとは

Norman’s Rare Guitarsは、カリフォルニア州に位置する世界でも有数の楽器店だ。店名の一部ともなっているNorman Harrisが1975年に開業し、現在までヴィンテージを中心とした希少なギターやベースを数多く販売している。(公式HPはこちら)

最大の魅力はやはり訪れる豪華なアーティスト陣だろう。かつてレジェンドSSWのBob DylanやThe BeatlesのギタリストGeorge Harrisonにもギターを提供したことのあるNorman Harrisが立ち上げたこの楽器店には、レジェンドギタリストから現在のトップを走るミュージシャンまで幅広く来店している。

それがわかるのがNorman’s Rare GuitarsのYoutubeチャンネルだ。ここでは、訪れた有名アーティストの試奏映像やトーク映像が投稿されており、ギタリストにとってはオアシスの様なYoutubeチャンネルである。

こちらは筆者の敬愛するギタリスト“Mr.335”ことLarry Carltonが来店した時のものだ。こういった海外ギタリストのオフショット的な一面と、比較的ラフな演奏が見られる動画は希少だと思う。同チャンネルの独占状態と言っても過言ではない。ちなみに彼の演奏は5:55~なので是非一聴してみてほしい。

執筆時点でなんと3332本もの動画をアップロードしている同チャンネルだが、その中の多くは著名なギタリスト、アーティストの試奏動画だ。個人的には試奏だけでなく、プレイングについても勉強になる動画が多い。出てくる言語は全部英語だが、わからなくても一切問題ない。

その中でも特に試奏時に参考になる、なんなら普通にコピーしたいと思わせるような動画をいくつか紹介し、その魅力について書き連ねていく。

トモ藤田

この人を紹介しないわけにはいかないだろう。バークリー音楽大学の講師を務めている凄腕ギタリストのトモ藤田だ。彼はアメリカを拠点に活動しているが、彼の出版する教則本は海を越え、様々なギタリストに影響を与えている。国内外問わずお世話になったギタリストは多いのではないだろうか。

ちなみに筆者はギターを始めた時に「演奏能力開発エクササイズ」を手元に置き練習に励んでいた。今ではその知識がギタリストとしての骨血肉となっている。

持ってない人は買うべき

そんなトモ藤田もこの名店に何度か訪れているようだ。その中でも試奏時において参考になるであろう動画を上部に掲載した。演奏は2:45~で、ピックアップをフロント/センター/リアに分けて試奏している。まずはそれぞれをコピーしよう。それが終わった時、あなたは既に3パターンの試奏フレーズが楽器屋で披露できる。

3:40~のセンターピックアップで演奏されている曲は、彼の代表曲でもある”Just Funky”のイントロだ。これを楽器屋で弾けば「あの曲知ってる」とウインドウショッピングに来ているギタリストから一目置かれることは間違いない。

「いや、全部難しいんですけど…」と思ったあなたは4:49~をコピーしよう。テンポが遅く、音をなぞるだけなら簡単だ。これくらいは耳(目)コピできるようになろう。この自然体なフレーズは試奏している感を薄くすることもできる。「好きなフレーズを弾いている」という顔で披露しよう。

Post Malone

なんとあのPost Maloneも来店している。その名声故同チャンネルの中で1,2を争う再生回数だ。彼の本業はラッパーだ。来店するのは純ギタリストだけではないことがこの動画からわかるだろう。Post Maloneについてはまた別途で記事を作りたいと考えているが、とりあえず今回は7月にリリースされた新曲“Motley Crew”を取り上げておく。

筆者がこの動画で伝えたいのは彼のギターへ向かう姿勢だ。試奏しているフレーズはおそらく彼のルーティンだろう、特別上手と感じるわけではない。ただ、彼が見せるギターへの純粋な好奇心は、「試奏なんか何弾いてもいいでしょ」と言わんばかりのものだ。楽器屋の店員が望む最高の反応ではないか。

試奏の3本のギターを弾き「That’s my favorite」と発言しているように、忖度のないところも好感が持てる。楽器屋に行って、「これも弾きたいんだけど言いづらいし今日はやめとこう」とか思っている方には是非見ていただきたい。試奏はあくまでも試奏ということを教えてくれる貴重な動画である。

Al Mckay

最後に紹介するのはEarth,Wind&Fireの元ギタリストAl Mckayの来店動画だ。個人的には彼のカッティング及びリズムギターが最も好きなので、若干独断と偏見でこの動画をチョイスしてしまった。

彼は動画中でEarth,Wind&Fireのフレーズを演奏している。2:17~で聴こえてくるのは、1977年にリリースされた名アルバム『All ‘N All』の1曲目に収録されている“Serpentine Fine”だ。Earth,Wind&Fire及びAl Mckay好きからしたら、これがまたたまらない動画なのだ。原曲も是非一聴してほしい。

この動画から伝えたいことはいたってシンプルである。

「この動画をコピーして、試奏時にこれを弾こう」

これだけだ。前後半に分かれているが、どちらも音をなぞるだけなら難しくないはずだ(ニュアンスを出すのは至難だが)。私はただ闇雲にこの動画勧めているわけではない。しっかりとこれをコピーすることの利点がある。

まずはその汎用性だ。トモ藤田のフレーズを7弦Ibanezでやったらちょっと寒いが、このフレーズなら寒くないのではないだろうか。どのギターを試奏しても、どの音色でも使えるフレーズだと思う(さすがにファズやドンシャリの音には対応できないが)。

また、彼はカッティングの神様に近い人物だ。これをコピーしたあなたは、数ランクギターがうまくなっているだろう。これは試奏時の参考にしてほしい動画だが、上手くなりたいギタリストたちにも勧めたいのだ。

「試奏時に何弾けばいいか教えてほしい」「ギターが上手くなりたい」という2つの問いに対しての回答を両立している動画はかなり貴重なものではないだろうか。実際筆者もこれをコピーしてから、試奏時の悩みがほぼ100%消えた。ありがとうAl Mckay様。

楽器店もチャンネルも「宝庫」

いかがだっただろうか。今回はわずか3つの動画しか紹介できなかったが、Norman’s Rare Guitarsは宝庫だ。まだまだ沢山の動画が眠っている。彼らのYoutubeチャンネルはこちらだ。是非一度チェックしていただきたい。

以前はギターに関する機材として、ルーパーペダルについての記事を執筆したが、今回はそのルーパーペダルを手に入れる前の段階で悩んでいる方へ記事を書いてみた。



最終的には「自分が好きなフレーズを自分が好きなタイミングで」弾けば何の問題もない。あくまで自己本位でギター選びをしていいと思う。ただ、わかっているけどそれができない方へ、少しでもこの記事が役に立てば筆者としては幸いだ。