ディスクレビュー

ネガティヴな僕らが4s4ki『Castle in Madness』の虜になるワケ


<消費、極まれり>な今日この頃。
いや、これは僕らがこの先もずっと抱えていく問題になるのだろう。
Tik Tokの後押しがどうだとかそういったものを省いても、遅かれ早かれ音楽シーンはその消費サイクルを早めていくものなのだから。

ガラパゴスな日本だと、欧米などの最新のシーンを取り入れること自体が先進的だと取り質される風潮が、今でもあることは否めない。
しかし、安易にそれらを取り入れたからといってリスナーから評価される時代になっているかというと、それもまた別の話だ。

海外シーンとの断絶が日々減っている中で、新進気鋭のトラックメイカーやHIP HOPアーティストも乱立しており、ちょっとやそっとの真新しさなんかでリスナーが振り向くわけもないのは言うまでもない。

混沌の2021年で、ネガティヴなマインドを抱えた僕らの耳に刺さるのは、その内面を強く表面化させる4s4kiの様なアーティストだと、彼女の『Castle in Madness』を聴いて感じる。

今作は、彼女が今年の7月にビクター・SPEEDSTAR RECORDSからリリースした初のメジャーデビューアルバムなのだが、その音楽性はこれまでに4s4ki自身が抱いていた内面となんらブレる部分がなく、むしろより色濃く現れた楽曲群だと思う。

筆者が初めて4s4kiを聴いたのは昨年の1月こと。家で寝ぼけながらに観たYouTubeには、”ラベンダー”という曲でカートゥーンキャラクターの狭間で揺れる彼女の姿があった。

サンプリングの海で儚く歌い上げる彼女に夢中になった雨の日であった。

〈揺れるカーテンはラベンダー 病院のベッドの中〉

そう歌う彼女の声には他のアーティストには無い内側の切なさを強く感じた気がする。
その日からApple Musicで彼女の他の曲を聴き始めた筆者だったが、『超怒猫仔/Hyper Angry Cat』を通しで聴いた時にそのサウンドの力強さには明確な意志が込められていると気づいてしまった。

近年のシーンで推測するとハイパーポップの文脈で語られるであろう彼女の前作は、〈今〉のムーブメントであるトラックメーカー達と組み上げられた最強のカルチャーソングばかりだった。

Masayoshi limoriとの共作である”monmon”には、今年の1月に急逝して惜しまれたSOPHIEの精神性に通じるものを感じたし、”猫jesus猫”ではダークポップとも言える、影を落とした様なラップのメロディと破裂せんばかりに暴力的なドロップが混在していた。

彼女の音楽性がそういった強度のある部分に集中しているのかと思いきや、”escape from”でエレクトロニカの側面をチラつかせながらJ-ポップ的メロディで僕らに刺さるリリックを届けるんだからスルーなんかできるわけがない。

〈意味はないの 生きてるだけ 君ごと壊してしまいたい〉と儚く歌う彼女自身の内面は、自己愛と自己嫌悪の狭間で揺れるZ世代の内面を再認識することに繋がったはずだ。

上記の様な暴力的とも言えるほどの自己表現を存分に発揮した『超怒猫仔/Hyper Angry Cat』リリース後、1年を経て放たれた今作『Castle in Madness』が僕らを掴んで離さない圧倒的な金字塔になったのは言うまでもない。

今作はPuppetやZheani、Smrtdeathなどの海外アーティストをフィーチャーリングした楽曲もあれば、釈迦坊主や何度も共作しているmaeshima soshiなど国内アーティストとの共同制作など今まで以上に豪華な内容となっており、メジャーデビューの勢いを強く感じたリスナーも多かったと思う。

しかし筆者はそのベクトルのみで彼女を理解するのでは少し足りないと思う。

冒頭からハイパーEMOとも表現できる様な、ロックな音像にキャッチーな4s4kiのラップを乗せたナンバーの”gemstone feat. Puppet”で聴く者の胸を締め付けたかと思えば、2曲目”FAIRYTALE feat. Zheani”では4s4ki自身の背景でもある国内ネットラップの空気と、ハイパーポップやHIP HOPの要素を混在させており、これまでの彼女が得意とするファンタジックな世界観をベットリとした新しい狂気で包み込んでいるのだ。

筆者は、上記の従来と異なる音楽性も内包された12曲からなる『Castle in Madness』は、彼女自身が元々抱えていた内面を更に鮮明にアウトプット出来たことが起因していると考える。

今思えば活動初期にリリースした楽曲にも、常に4s4kiが抱える自己のネガティブやシニカルなマインドをこれでもかと詰めていたと思うが、そこには偶然ハイパーポップに通ずる精神が宿っていたのではないだろうか。

パーソナルな救いを歌う初期作”Give me a hand”のリリックから、融解する自己精神を表現した今作の”m e l t”に至るまで、彼女は常に自分の内側をオープンにすることでZ世代を中心に抱える崩壊したアイデンティティに寄り添っている様に感じるのだ。

従来の音楽ジャンルでは括りきれないハイパーポップという音楽性と彼女の混沌とした内面は親和性が高く、4s4ki自身も表現における拡張性を見出していたはずだ。

音楽ナタリーのインタビューでも語っていたが、彼女のルーツであるPC Music所属アーティストやハイパーポップを経て、今作で海外アーティストと取り組んだことは、その音楽性を更に加速させたことは一聴しただけでわかる。

そこに宿る音楽性には、やはり4s4kiの深層心理が色濃く出ている。
それはハイパーポップという一種の流行りをただ取り込んでいるわけではなく自身の抱える超越した感覚と調和した結果なのだろう。

これから先の活動の中たとえハイパーポップというジャンルの廃れた時代が来ても、彼女は自己の精神とリンクする音楽シーンがあればすぐにでも混ざり合えると思う。
今作『Castle in Madness』ではその柔軟な身体性を有していることを証明できたはずだ。

ワンマンやフジロック’21でのステージを終え、これから更に羽ばたく彼女はどこのステージでも、ネガティヴとポジティブを抱えた僕らと常に共鳴し続けるだろう。


▼『Castle in Madness』▼

01. gemstone feat. Puppet
02. FAIRYTALE feat. Zheani
03. m e l t
04. ALICE feat. Smrtdeath
05. 天界徘徊 feat. 釈迦坊主
06. moonlake
07. 幸福論
08. Sugar Junky
09. OBON 10. UNICORN
11. STAR PLAYER
12. kkkk

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