colormalがついに2ndミニアルバム『diode』をリリースした。
ソロ時代に送り出された『merkmal』から約5年という期間を経て世に出された今作は、その歳月の中でバンドとしてのcolormalの全体像を強く映した円盤だと個人的には感じた。
アルバム名は以前にこちらのブログでも書いた「anode-EP」と、先日配信リリースされた「cathode-EP」の2つの作品を組み合わせて繋げたことに由来しており、前2作品と合わせてコンセプトアルバムを象徴している。
ちなみに今回のアルバムは現在サブスクリプションなどでの配信はされていないので、私はディスクユニオンから我が家に迎えた。後述するがディスクユニオン限定特典として「発光(demo)」が付属する。嬉しい。
正直彼らのライブで購入すると特典としてコード譜など諸々も付属するようなのでかなり迷ったのだが、直近で東京でのライブがなかったことや新しいデモ音源がどうしても聴きたくて血涙を流しながらこちらで購入した。
colormalについて個人的に馳せていた気持ちなどは過去の記事で既に書き切った心づもりではあるので本日はシンプルに収録楽曲についてつらつらと書こうと思う。というより、はなからそんな前置きは不要なほど今作は非常に完成度が高い。
本アルバム収録楽曲のうち、「anode-EP」に収録されている楽曲に関しては以前の記事で詳しく書いているので今回は「cathode-EP」収録楽曲を中心に紹介していく。
(今回のアルバムは特設サイト内にて『merkmal』以来のメンバーによる詳しい各楽曲解説を含めたロングインタビューもあるので制作背景やフレーズなどの細かい解説はそちらを覗いてみてほしい。)
「anode-EP」にて最後に位置付けられ、ジューシーなギターサウンドと共にバンドとして漕ぎ出していく姿が浮かぶ「アンセム」と宅録時代の流れを汲んだリズムカルな「22」の2曲を経て顔を出すのは記憶に新しい楽曲「回転」だ。
私がこの楽曲を最初に聴いたのは昨年の東京でのライブだったのだが、その時点でこれまでのcolormalとは違う異質さを伴った楽曲だったのを覚えている。
イエナガ氏によるバッキングで始まり、やささく氏のリフやマツヤマ氏の這うようなベースフレーズと合わせて静謐かつダークなまま徐々に展開していく面白さがこの楽曲にはある。
特設サイトでのインタビューではL’Arc〜en〜Cielなども楽曲リファレンスに含まれているとイエナガ氏は話していたが、個人的にはそれだけでなく、2005年〜2015年辺りで精力的に活動していた日本の短調系ロックバンドの匂いを歌のメロディの随所に感じた。
”あってはならないこんな不条理は 回っていたのはあたしの方だった 身を投げ出すようなうたを歌うように”
二昔前だとNOVELSとかBowl辺りのアニメ主題歌だけどどこか暗くて、でもその暗さが痺れるくらいカッコよく思えたバンド達の記憶をこの楽曲に重ねてしまうのは、きっと自分が幼い頃に好きで聴いていたこともあるしそれくらいイエナガ氏の芯にあるメロディにJ-Pop然とした人懐っこさがあるからなのだろう。
サビや後半の掻き鳴らすように弾くギターにはこれまでのcolormalとしての軸をしっかりと前に出した形になっており、楽曲の持つイレギュラーさも全く違和感無く落とし込んでいるのには彼らの音楽活動の密度を感じさせる。
続く4曲目「在処」は、losstime以降のcolormalらしさがどちらかと言うと強く感じ、まさにこちらはアルバム中盤に位置するのに相応しい楽曲だと思う。(下記は「cathode-EP」より)
イエナガ氏由来の怪しげなコード感で始まり、どう進んでいくかが想像つかないまま聴き進めていくと、
Bメロ辺りから徐々にその性質をたいなか氏のスネアロールと共に穏やかだが力強いものへの変化させていく。
サビで広がっていく心地が良くも少しの寂寥が宿ったメロディは、優しい幽霊などにも通ずる、いつまでも色褪せないであろう良い楽曲だ。
「在処」の後には5曲目「eyes on you」が差し込まれており、「瞳」のインタールードとしての役割かつその物語性を予感させるような楽曲となっている。
私は4月に東京下北沢のライブハウスで初めて聴いた際、「瞳」イントロ前のライブアレンジにしては良すぎでは‥?と思っていたのだが、ちゃんと楽曲としてアルバムにも収録されており安心した。すごく良いもの。
こういった生感のあるインタールードには、今のcolormalをとてもバンド然としている4人組の集団として感じれる役割も含めて意味があると私は思っている。あと単純にワクワクしませんか。
リリース以降、根強くキラーチューンとなった「瞳」を堪能した後には、アルバムリリース前にミュージックビデオも出た楽曲「天国」が始まる。
自らの現在地を中心と捉えるか、離れた事象の居場所を中心と捉えた上でそこを経過するように日々を過ごしていくのか、様々な考えを抱きながら私はこの楽曲を聴いていた。
colormalの他MVも担当している皆川 萌氏が、喫茶店でのイエナガ氏をほぼワンシーンで撮影した素朴な映像に乗せられた「天国」は離別、ともすれば残された場所に佇む人の気持ちを丁寧に描写しており、そこに向き合う多くの人達の気持ちを抱くような柔らかな歌詞だ。
”天国がもしもあれば あれから先のこととか 誰にも分かりきっていることだけ 訊くんだよ”
楽曲自体は穏やかに進んでいくものの、途中でギターの巻き弦の心地良さやフックとなる展開もあり退屈さを感じさせないのも個人的にはとても気に入っている。
この後には私が大好きな楽曲「優しい幽霊」が収録されている。どこまで満足させてくれるんだろうこのアルバムは。
(下記は「anode-EP」より)
その良さは過去にも私自身の抱いた感情を含めてレビュー記事を書いたので今更書くことは何もない。
個人的ベストは揺らがない。と自信を持って言いたいのだが、何がってcolormalにはとにかく名曲が多い。
『merkmal』収録の「夢みる季節」からcolormalを見つけ、常々リリースされた楽曲の虜にされた私は、本アルバム収録の最後に位置する「塔」の収録も密かに待ち続けていたのだ。
この楽曲も「優しい幽霊」同様に数年前からライブで演奏されていた曲なのだが、楽曲展開と圧倒的な轟音の上に載せられるメロディの美しさに私は魅入ってしまった。
”かつてない大雨が 比類のない夏の乱反射が押し上げて 今はまだ燃ゆるような 由来のない煙になって”
とイエナガ氏が歌う歌詞を改めて眺めると、楽曲の音像と共に脳内にまばゆく様に風景が浮かぶ。
死という主題や、その周辺を含めた風景描写が楽曲全体を通しても非常に印象強くはあるが、それと同じくらいの艶やかさが宿っていると感じるので本作の中でも特にリピートして聴いている。ギターの音もとても心地がいい。
改めて聴いても『diode』は『merkmal』以降の彼らを象徴するアルバムとなっていると思う。それは単に4人組バンドになったからという範疇に収まった話ではない。
イエナガ氏からスタートしたcolormalというアーティストが3人のメンバーを通して楽曲性を徐々に変化させていく過程と、ミュージックビデオでは皆川 萌氏が、ジャケットとしてはグラフィックデザイナーのFujita Masahiro氏が彼らの音楽性を表現するように制作している現在の形を含めて私はそう感じたのだ。
先日、大阪南堀江のライブハウスSOCORE FACTORYでのリリースイベントでは、かねてよりファンの中で熱望されていた君島大空トリオとの対バンを果たした彼らは今、どこを切り取っても輝いているように見える。
ただ、その輝きは白熱灯のような一瞬のものではなく、これまでのライブ活動の数々や、周囲を巻き込むように生々しいほど力強く回してきた根幹の音楽性による発光が正体であるということは聴いた人なら誰もが気づくのではないだろうか。
本アルバムのディスクユニオン特典「発光(demo)」を聴いたが、そこにも豆電球のような暖かさがあった。静かな積み重ねによって惹かれ合い、生まれた繋がりを優しく模っているかのように聴こえたのだ。
改めて2ndアルバムリリースおめでとう。これからも彼らが力強く船を漕げますように。
▼colormal 2nd mini album『diode』▼
収録曲 :
1. アンセム
2. 22
3. 回転
4. 在処
5. (eyes on you)
6. 瞳
7. 天国
8. 優しい幽霊
9. 塔
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