コラム

【コラム】音楽と病を両手に抱えている人へ:耳管開放症の私が行っている治療方法について


音楽をしている人って結構病気を抱えている人多いんじゃないかな。と、ふと感じた。
そこには精神的な病を持っていて、心の拠り所として音楽を始めた人も多いと思う。

ただ、そうやって縋り、努力する中でもまた一つ二つ、身体的な病気を患うことがある。
人間とは常々このあたりの融通が利かないものだ。

職業性ジストニアやばね指、腱鞘炎(TFCC損傷・肘部管症候群・ドケルバン病)など、努力をする中で発症してしまうような人を見ると自分を重ねてどうにも苦しくなる。
演奏に関わる部分の故障は本当に恨めしい。

私は、大学生のころから、 腱鞘炎と耳管開放症というものを抱えて今日まで生きてきた。
幸い音楽で飯を食べる生活は送っていないので、
取り急ぎ治すほど重症ではないが、全く問題ないかと言われるとそうでもない。
そういう中途半端な症状だ。

この記事を書こうと思ったのもそんな中途半端な症状だと自覚しているからだ。

他人から見てもわからない。自分から見ても早急に治すものなのかよくわからない。人に強く発信するほどでもないのかもしれない。
そんな病気を持ったままの人って多くないだろうか。

特に耳管開放症は、ボーカルなど歌を歌う人にとってはクリティカルな問題だ。

このブログを見ている人はきっと音楽を好きな人達だと思うし、その中にはカラオケで歌うことを楽しんだり、音楽活動をしている人も多いと思う。

もしそういう人たちの中で、その中でも限られた耳管開放症・耳管狭窄症を抱えている人がいたら、きっと私と同じように悩んでいると思う。理解者も少ないはずだ。

折角、アウトプットする場所もあるので耳管解放症がどういうものなのか、そして私が現時点までで試した治療法をつらつらと書いていこうと思う。

※このコラムを読んだ人の中で、もしも他に良い治療法や、効果的な治療法などご存知でしたら是非ともSNSなどで拡散やリプライでその治療法を教えていただけると嬉しいです。

耳管解放症・耳管狭窄症とは

そもそも 耳管解放症・耳管狭窄症が何かわからない人も多いと思うので一から説明すると、人間の体内には耳管という器官がある。
耳と鼻をつないでいる器官であり、人間が外部との気圧差が激しい時にバランスを取る働きがある。

みんなも飛行機に乗った時や、山登りなど高いところに移動した際に鼓膜に圧迫感を生じることはないだろうか。その時に唾を飲みこんだり、耳抜きをして治そうとしたことがあると思う。その際の器官である。

通常なら上記のような行動を取ればいいのだが、 耳管解放症・耳管狭窄症 の場合はその調整が効かず、ずっと強い圧迫感を感じたり耳管が開いたままで自分の呼吸音や声がくぐもった状態で大きく聴こえる。(これを自声強調という)

この病気は、根本的な原因というものがわかり辛いのだが、副鼻腔炎や上気道炎などで耳管に炎症が起こった際などや、体重が急に減少するような場合に起こりやすいものらしい。

私の場合は、小学生のころから頻繁に扁桃炎を患っており、月に1回程度で咽頭が腫れたり、鼻づまりに悩まされていたので、その中で発症してしまったのではないかと思う。

病院のサイトなどで治療法を調べると、鼓膜にチューブを設置したり、耳管の周りに脂肪注入や、ピンの挿入をする方法もあるそうだが、個人的には耳の周りにそういったことをするのは少し怖い上に、そこまで重度な症状でも無いので、他に治す方法がないかを探す方針に切り替えた。

何故、歌を歌う人にとって致命的なのか

ここまでで、耳管解放症・耳管狭窄症が何かは理解できたと思うので、耳管解放症が歌を歌う際にどれくらい致命的かを書こうと思う。

耳管解放症は、症状が出るとひたすらに自分の普段は気にならないような呼吸音が大きく聞こえたり、水中にいるかのようなゴーゴという低音が鳴っており、自分の普段発声している感覚と大きく変わる。

耳の違和感は勿論、それ以上に自分の発している音が普段の何倍も大きく聞こえ、逆に聴こえ辛くピッチが合わなくなるのだ

この病気を抱えている人にはわかる人もいると思うが、この病気の難しいところは自分の声が「聞こえ辛く」なる部分だと思う。
鼓膜が破損したわけではないので全く聴こえないわけではないのだ。当然会話も出来るし、痛みなどもない。
ひたすらに不快ではあるのだが。

ただ正確さが求められる歌に関しては、今自分が出している音が大きいのか、小さいのか、ピッチが正確か、空気感などの表現に関わる部分の彩度が急に損なわれるためどうにもやり辛いのだ。

かつて歌手の中島美嘉さんも耳管開放症を発症したままのライブが厳しく活動休止されていたが、実際に発症しているボーカリストの方には本当に厳しいものがあると思う。

私も発症する度に大きなストレスとなっていたが、嘆くだけでは意味が無いので、ひたすらに改善方法を模索した。ここからはその改善方法を記していくので、この病気を抱えている人がいたら一度試してみてほしい。

改善方法①:体調を崩さない(特に睡眠をしっかりと摂る)

一つ目から当たり前のことを言うなと叩かれそうだが、これは耳管開放症の人には第一に心がけてほしい。
私も何度も経験しているので痛いほど身に染みているのだがこの病気、体調が悪い時ほど起こりやすい

特に風邪や、自分で免疫力が低下しているなと感じた際には、その状態で歌を歌うとほとんど高確率で起こる。疲れた体にこの症状が出ると二重の意味でストレスも溜まる。

まずは基本中の基本ではあるが、体調管理だ。
特に睡眠不足との連動が大きいと私は実感しているので、出来る限り睡眠時間は確保してほしい。

改善方法②:漢方薬

これまた知っている人は知っていると言われそうなものだが、この病気、漢方で若干の効果が出たりする。
これが改善方法①の体調不良に効果があるからかは不明だが、飲むと少し効果がある。

私が飲んでいるのは補中益気湯(ホチュウエッキトウ)というもので、耳管開放症に効くと言われてる有名なものだ。主に自声強調の症状を少し抑えるものとなっており、症状を自覚した際は、歌う1時間前などに服用するといい。
ツムラの 補中益気湯は有名なので大体のドラッグストアとかで買えると思う。

改善方法③:頭を下にする。

これはSNSで探していた際に、筆者が偶然見つけたものだ。

筆者の場合は一時的なものではあるが、耳管解放が大きく改善される。
前傾姿勢を取ったり、頭を下げて寝るだけとシンプルな治療法だが、歌のパフォーマンス中や、知人と過ごしている時間にはなかなか難しいのではないかと思う。

私もこの方法を見つけたが、どうにも毎度やるには難しい。そこで、この方法が何故効果的かを考えた。
これは頭に血が溜まってることが作用しているのかと予想し試行錯誤してもう一つの改善方法を見つけた。
それが下の改善方法④だ

改善方法④首を圧迫する

現時点で私が発症した際に一番効果があるのはこの首を圧迫するという方法だ。
と言ってもよくある首をがっつり絞めるようなものではなく、手の平で歌う際の呼吸に影響の出ない首の側面を圧迫するようなイメージだ。下の男性の画像はネットで拾ったものだが、筆者が圧迫する際のポーズに最も近かったので参考までに載せておく。

あくまでも血流だけを止めるような形なのでがっつり抑える必要もないし、片手で抑えるだけでもある程度の効果は出る。
特にボーカルでマイクを抱えている人でもこれなら現実的だと思う。やや不自然ではあるが。
慢性的な人などはスカーフなど首に巻き付けて圧迫する形もありだと思う。
(勿論、医学的な根拠に基づいたものではなく、あくまで私個人が現在行っているものなので、実行する際にはくれぐれもうっ血症状や呼吸に影響が出ない範囲かつ自己責任でお願いします。)

あとがき

私の場合は、極力は漢方を服用し事前に発症しないように抑えるが、それでも本番や大事な時に発症した際には前傾姿勢や首を圧迫することで歌を歌ったりしている。

音楽をやっている人の中で、少しでもこのように自分が抱えている病気があれば、それをSNSなどで公表し助けを呼ぶことも出来ると思う。

今回の耳管解放症・耳管狭窄症だけではなく、他の病気に関しても音楽関係者など各職業ごとにその病を抱えている人のコミュニティが普及することを望みます。